子宮内膜には受精卵を受け入れる期間があり、その期間以外では子宮内膜は受精卵を受け入れることが難しくなります。
この、子宮内膜が受精卵を受け入れるのに適した状態の期間を「着床の窓」(Window Of Implantation)と言い、その時期や期間は人それぞれ違います。
☆こちらでも解説しています → 不妊用語集:着床の窓 implantation window
体外受精の際、着床の窓に合わせて受精卵を移植することで、妊娠の成立の可能性が高まります。
この着床の窓は、排卵日を0日として排卵後7±2日と推定されています。
ただ、タイミングや人工授精では着床の窓を考慮する必要はありません。
リプロダクションクリニック大阪・東京の松林秀彦先生は、ご自身のブログ「松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ 」の中で以下のようにおっしゃっています。
着床の窓が意味を持つのは「胚移植」の場合のみです。
タイミングや人工授精の場合には、卵管膨大部で受精してから卵管をゆっくり移動し、7日後に着床します。着床の窓の検査でズレがある方でも、タイミングや人工授精で普通に妊娠されますので、おそらく受精卵が卵管を移動する際に子宮内膜と情報を共有し合って、内膜のスピードを調整しているのではないかと、私は考えています。従って、(遺残卵胞と思われた卵胞だったとしても)通常通り排卵日に人工授精を行っていただくのが正解です。
しかし、「胚移植」の場合には、受精卵は卵管に存在せず、培養器の中にあります。そして、突然子宮に入ってきます。内膜のスピードを調整する時間的猶予がありませんので、内膜のスピード(準備状態)と胚のスピード(着床できる状態)が合っていなければ着床できません。
つまり、タイミングや人工授精では、着床の窓を考慮する必要はありません。
着床の窓は、月経周期によって基本的には変化しないとされていますが、中には妊娠分娩後や流産後に、着床の窓が変化した方もいらっしゃいます。
なお化学流産は、しっかり着床の窓が合っていることにはなりません。
また、自然妊娠歴(タイミング・人工授精を含む)は、胚の成長スピードが不明(排卵何日目に胚盤胞になったのか不明)なので、自然妊娠歴があることが着床の窓のズレがない証明にはなりません。
現在では、「子宮内膜受容能検査」といって、着床の窓がいつかを検査して調べることができます。
それが、2011年に出たスペインのIgenomics社のERA検査と、2020年に日本で認可された、アメリカのCooper Surgical社のERPeak 検査です。
ERA法は、ホルモン剤を投与して子宮内膜を厚くし、5日目に子宮内膜を採取して着床の窓を確認します。
ERPeak法は、子宮内膜組織を採取して関連する遺伝子の発現量を調べます。
細い管を膣から子宮内へ挿入して組織を採取して行い、検査結果はおおよそ2、3週間後になります。
ERAに比べ検体量が少なくても判定可能なのが特徴です。
ただ近年、ERA検査に否定的な論文が増えており、ERA検査に基づく凍結胚移植の有効性に疑問が生じているようです。
ERA法もERPeak法も保険適用ではありませんが、「先進医療」といって保険適用治療と同時に行うことができます。
この検査の対象者については、多くのクリニックが、
● 体外受精や顕微授精で比較的良好な胚を数回移植しても、着床しなかったり、化学流産を繰り返す方
● 子宮内膜が慢性子宮内膜炎だと着床の窓がずれるので、この慢性子宮内膜炎がない方、もしくは治療された方
を対象としています。