低用量ピルで卵子の減少を止める?

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低用量ピルで卵子の減少を止める?

低用量ピルと聞いて、「避妊」や「生理を遅らせる」と連想される方がほとんどだと思いますが、
そのピルのメカニズムゆえに、妊活においては、毎日自然に減っていっている卵胞の減少を緩やかにすることができる、という効果があるのです。

以下、リプロダクションクリニック大阪・東京の松林秀彦先生のブログからの引用です。

”通常毎日原子卵胞から卵胞が供給され、成熟卵胞あるいは閉鎖卵胞へ変化しますが、いずれにしても卵子が減少します。しかし、ピルを使用するとこれらの過程をある程度阻害することになるのではないかと考えます。
(中略)
ピルによってFSHが抑制されるため、胞状卵胞以前の小さな卵胞発育が一時的に減少(つまり卵子が無くなるスピードも減少)します(これはFSH投与により回復します)。ピルを長期使用すると、卵子の減少を食い止め、妊孕期間を遅らせることができるという論文も報告されています。”

(松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ ☆☆ピル(OC)のメリット

このように、卵胞の減少を遅らせて妊娠できる期間を延ばすのに、利用ができる低用量ピル。
でも、やみくもに服用するのは、やはり危険です。
正しい知識を持って有効利用できるよう、今回はピルについてお話したいと思います。

低用量ピルとは

低用量経口避妊薬のことで、OC(oral contraceptives)とも言います。
その中身は卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の女性ホルモン2種類の合剤で、そのホルモン量が時期によらず全ての錠剤で一定な”一相性”と3段階に変化する”三相性”の2つのタイプがあります。

低用量ピルの服用の仕方

月経が始まった時点(初日から5日目以内に飲み始めるのが望ましい)から飲み始め、21日投薬、7日休薬のサイクルです。
つまり、ピルを長期に摂り続けていても、必ずピルを摂らない期間がある、ということで、完全に毎日摂る連続使用、とは違います。

低用量ピルの効果

1. 排卵抑制、頚管粘液増加、内膜菲薄化作用により、受精および着床を妨害し、避妊効果が現れる。
2. 生理痛が軽くなり、出血量も減る。
3. 規則正しい生理周期ができる(生理周期が28日になる)
4. 月経前症候群が軽くなる。
5. ニキビや肌荒れの改善になる。
6. 子宮内膜症リスクが低下する(また、ピルは子宮内膜症の治療薬としても用いられる)
7. 卵巣癌・子宮体癌の予防
8. 骨盤内感染の予防
9. 卵管炎、骨盤腹膜炎、卵管閉塞、卵管狭窄、腹腔内癒着の予防
10.骨粗鬆症の予防

なぜ卵巣癌・子宮体癌の予防に?

ピルにより排卵が抑制されることで、毎月の排卵後の卵巣の傷の修復が不要になる、また、ピルに含まれる黄体ホルモンが子宮内膜を保護するためです。

なぜ骨盤内感染の予防に?

ピルにより頚管粘液が増加することで、子宮への細菌やウィルスの侵入を妨害するためです。
このために、9の「卵管炎、骨盤腹膜炎、卵管閉塞、卵管狭窄、腹腔内癒着の予防にもなるのです。

妊活におけるピルのメリット

ピルの排卵抑制により、卵子がなくなるスピードが減少します。よって、妊孕期間を伸ばせる可能性があります。

月経開始日は、卵巣から分泌されるエストロゲンの量が一時的に少なくなっているため、それを受けて脳の視床下部は、FSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌しはじめます。

本来ならば、FSHの刺激を受けて、卵巣からエストロゲンが分泌され、それがまたFSHの分泌を呼び、だんだんと卵胞が成長して排卵に向かいます。

でも、FSHが分泌を始めた時点で、その時点のホルモン量よりわずかに多い量のエストラジオールとプロゲステロンを含んだ「低用量ピル」を服用すると、視床下部は、卵巣から分泌されるホルモンと勘違いをして、FSHの分泌を中止します。

すると、卵巣では自力でエストロゲンをつくらなくなるので、確実に排卵が止まります。

排卵しないので、本来排卵後の卵胞から分泌されるプロゲステロンも、もちろん出なくなります。

このように、低用量ピルを服用するとピルは排卵を抑制するため、卵子の減少を食い止め、妊孕期間を遅らせるとされています。

ピル服用を止めると

ピルの服用を中止すれば、また妊娠できる状態となります。

多くの後方視的研究により、他の避妊法と比較して、ピル使用中止後の「短期的な」妊孕性低下が示されていますが、長期的な妊孕性については、研究はわずかではありますが、妊孕性は他の避妊法と比べて変化なし、とされています。

一般的に、7日間の休薬の後続けてピルを飲まずにいると、FSHの分泌が再開され、それによって卵巣の卵胞が反応してエストロゲンも分泌を再開し、約2週間後には排卵が起こります。
なお、ピル服用中止後すぐの排卵で妊娠しても、問題はありません。

ピルの服用ができない人

・今すぐ妊娠したい方
・喫煙
・未治療、治療中の乳がん、子宮体がん
・高血圧
・血栓症、凝固異常の病気が過去にある方
・肥満
・糖尿病
・妊娠・授乳中
・肝機能障害

ピル服用の注意点

ピルの副作用で一番問題なのが、静脈の血管の中で血の塊(血栓)ができて血管が詰まってしまう「静脈血栓塞栓症」です。
よって
・ピル服用中に、術後に長期臥床を強いられる手術を受ける場合は、「術前4週間・術後2週間」はピルの服用を中止する必要があります。
・ピル服用中に、飛行機に6時間以上の搭乗する場合は、静脈血栓塞栓症になりやすいので、2時間ごとに手足を動かしたり、水分補給、アルコールの摂取を控えるなどを心がけましょう。

ピル服用によるがんの発症リスク

ピル服用と、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、大腸がんの発症リスクについては

・ 子宮頸癌のみ、長期服用(5年以上)でリスクが増加します。
・ 乳がんのリスクは増加しません。

正しくピルを理解して、妊活に役立てましょう。

監修:日本不妊カウンセリング学会認定 不妊カウンセラー 松村恭子


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