今回は、多のう胞性卵巣症候群に関する研究の報告です。
多のう胞性卵巣症候群は、妊娠が可能な世代の女性の5-7%に見られる症状で、排卵しづらい一つの原因となっています。
その原因の一つが、インスリンというホルモンがうまく機能しない、ということ。
それにより、男性ホルモンが増加して卵胞から卵子が飛び出にくい、つまり排卵しづらくなると言われています。
インスリンの機能が乱れる原因が、肥満。
なので、多のう胞性卵巣の症状があって肥満傾向にある場合は、まずはじめに減量を試みる必要があります。
でも減量って、なかなかすぐにはできません。
むしろ急激な減量は、別の面からホルモンバランスを崩してしまうことがありますから、無理なダイエットはNG。
となると、何かアシストしてくれるものがあれば・・・
ということで今回、イランのアラン医科大学の研究グループが発表した多のう胞性卵巣症候群と大豆イソフラボンの摂取についての研究結果を、ご紹介したいと思います。
ご参考いただけると幸いです。
多のう胞性卵巣症候群患者の代謝状態に及ぼす大豆イソフラボンの影響
<目的>
この研究は、大豆イソフラボンが多のう胞性卵巣症候群(以下PCOS)患者の代謝状態に及ぼす影響を判定するために行われた。
<方法>
この無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、ロッテルダム基準に従ってPCOSと診断された18〜40歳の70人の女性に対して実施された。
参加者は無作為に、35人ずつの2つのグループに分けられ、50mg/dの大豆イソフラボン、またはプラセボのいずれかを12週間服用してもらい、代謝、内分泌、炎症、および酸化的ストレスのバイオマーカーを測定した。
<結果>
大豆イソフラボン服用グループは、プラセボグループと比較して
1.インスリン循環血中濃度およびインスリン抵抗性指数を有意に低下させ、定量的インスリン感受性検査指数を増加させた。
インスリン循環血中濃度 : イソフラボン服用グループ -1.2±4.0、プラセボグループ + 2.8±4.7μIU/ mL
インスリン抵抗性指数 : イソフラボン服用グループ -0.3±1.0、プラセボグループ +0.6±1.1
定量的インスリン感受性検査指数 : イソフラボン服用グループ + 0.0009±0.01、プラセボグループ -0.01±0.03
2.遊離アンドロゲン(男性ホルモン)指数および血清トリグリセリド(中性脂肪)について有意な減少をもたらした。
遊離アンドロゲン指数:イソフラボン服用グループ -0.03±0.04、プラセボグループ + 0.02±0.03
血清トリグリセリド: イソフラボン服用グループ -13.3±62.2、プラセボグループ +10.3±24.5mg/dL
3.血漿総グルタチオンの有意な増加があった一方、マロンジアルデヒドレベルの有意な減少がみられた。
血漿総グルタチオンとは、アミノ酸のL-システイン、L-グルタミン、そしてグリシンで成るトリペプチドで、抗酸化物質として働き、特定の解毒作用に関わる物質。
マロンジアルデヒドとは、脂質過酸化分解生成物の一つで、脂質過酸化の主要なマーカーとされています。
血漿総グルタチオン:イソフラボン服用グループ + 96.0±102.2、プラセボグループ + 22.7±157.8μmol/L
マロンジアルデヒドレベル:イソフラボン服用グループ -0.7±0.8、プラセボグループ + 0.8±2.3μmol/L
なおこの研究を通して、PCOSを有する女性の大豆イソフラボンサプリメント摂取後に、副作用は報告されなかった。
<結論>
PCOSを有する女性における大豆イソフラボン投与により、インスリン抵抗性、ホルモン状態、中性脂肪、および酸化的ストレスのバイオマーカーのマーカーを有意に改善した。
このように、多のう胞性卵巣症候群の女性が大豆イソフラボンを摂取すると、インスリンの機能異常や中性脂肪、ホルモン状態が改善されて、結果排卵しやすい状態となる可能性が高まることがわかりました。
もし多のう胞性卵巣と診断されて、日ごろのお食事の中で大豆の摂取量が少ないな、と思い当たられたら、お味噌汁やお豆腐、納豆などを食べるように心掛けてみられるとよいかもしれませんね。
▼こちらもよろしければご参照ください
▼出典
The Effects of Soy Isoflavones on Metabolic Status of Patients With Polycystic Ovary Syndrome
Mehri Jamilian(Ark University of Medical Sciences), Zatollah Asemi(Kashan University of Medical Sciences)
Published:04 August 2016