(野末悦子先生 産婦人科医師 横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任)
88歳の現役婦人科医として話題の野末悦子先生に、冷えや更年期についてインタビューさせていただきました。
Q:冷え性とよく言いますが、医学的にはどういう状態なのでしょうか?病気なのですか?
冷え性・冷え症と書き方は二通りありますが、日本では「からだの特定部位が、深い冷たさで悩まされる」状態を冷え性と呼び、病気というより「冷える性分」「冷える体質」を意味します。
一方、東洋医学では「冷え症」を使い、病気の症状と認識され、漢方薬が処方されます。
いずれにしても、冷えの症状は、日本人、特に日本女性に特有の症状であるとされることが多いですね。
この時の冷たさを「からだの中に穴が開き、その中を風が吹き抜けるような不快感」と表現した患者さんもいらっしゃいます。
冷えの症状は、一つの症状として固定しているものではないので、「冷え性」でもいいのではないかと思います。
Q:更年期、さらに最近は若年性更年期が注目されていますが、これらの原因はどのようなことでしょうか?
女性の更年期は、卵巣機能から見た「成熟期から老年期への移行期」を指しています。
ホルモンの分泌中枢である視床下部と、実行役の下垂体、そして女性ホルモンを分泌する卵巣は、互いに影響し合っています。
また、視床下部は自律神経も司っています。
でも、加齢に伴って卵巣機能が低くなり、女性ホルモンの分泌が少なくなっていくと、ホルモン分泌系機能が乱れるとともに、同じ中枢の自律神経も乱れ、肩こりや腰痛、手足のほてり、発汗、頭痛、不定愁訴などの症状が起こります。これを更年期障害と言います。
閉経はこの移行期の間におこり、現時点では平均で約51歳です。なので更年期の期間としては、月経不順が始まる45歳から閉経後の55-56歳の約10年間とされています。
若年性更年期障害は、正しくは病名ではありませんが、20-30代の若い女性に、生理が不順になったり、月経がなくなったりなど更年期障害と同じような症状が見られることをいいます。
この原因は、ダイエットや不規則な生活などによるホルモン変調と、受験・就職・仕事などのストレス、そして性格が深く関わっています。