「腸内環境を整える」「腸活」など、腸にまつわる言葉をよく耳にするようになりました。
それは、近年アレルギーや花粉症などに悩む人が増えてきた(顕在化した)からかもしれません。
今回は、腸内環境を整える方法を中心にお話したいと思います。
アレルギーと腸内環境
「腸内細菌を整えることでアレルギー症状を緩和できる」ということが注目されていますが、いったいどんな仕組みなのでしょうか。
私たちの体には大きく分けて2つの免疫システムが備わっています。
ウイルスや細菌などの病原体を体内に侵入させないように体を守る「粘膜免疫」と、
それらが体内に侵入してしまったときに異物を排除するように働く「全身免疫」です。
粘膜免疫システムの中心は、広大な面積をもつ腸管、つまり小腸・大腸です。
ここで、からだに必要な栄養素を吸収しながら、病原体を排除する感染防御の役目を果たしています。
ちなみに、腸以外にも眼や鼻、口、気道、肺といった体外環境と接する器官の粘膜面では、粘膜免疫システムによる感染防御が行われています。
そして、この粘膜免疫システムに大きな影響を与えるのが、腸管内に生息する腸内細菌の働きです。
粘膜免疫システムによる感染防御には、腸内細菌が大きく関係しているのです。
腸内細菌ってなんだろう?
大腸に棲む細菌を「腸内細菌」といいます。
通常ウイルスなどの異物は、免疫システムにより体内から排除されるのですが、免疫寛容という仕組みによって排除されないものがあります。
この仕組みによって共存を許された細菌のひとつが「腸内細菌」で、約1,000種類100兆個にもなります。
腸内細菌は、菌種ごとの塊となって腸の壁に隙間なくびっしりと張り付いています。
この状態が、品種ごとに並んで咲くお花畑(=flora/ラテン語)にみえることから「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。
日本語では「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と言います。
腸内細菌は3種類
腸内フローラを作っている菌は、働きによって3つに分けられています。
・私たちの身体を守る善玉菌
・増えすぎると身体に悪影響がある悪玉菌
・状況によって善玉菌の味方をしたり悪玉菌の味方をしたりする日和見菌
そのバランスは「善玉菌2・悪玉菌1・日和見菌7」が理想ですが、毎日のように変動します。
そしてこのバランスが崩れると、便秘や下痢などおなかの不調、肌荒れ、アレルギーなど、からだに悪影響が出るのです。
腸内細菌は人それぞれ
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、このように説明されています。
腸内細菌の種類は個人によって極めて多様で異なり、さらに食事・在住国などの要因によっても異なるとされています。また、菌の数は年齢によって増減はあるものの、菌の種類は一生を通じてほとんど変わらないことも報告されています。例えば抗生物質の飲用や食中毒では腸内細菌は大きく変動しますが、時間の経過とともに元に戻るとの報告があります。
このように、腸内フローラ(細菌叢)を作っている細菌の種類や割合は、人によって異なるため、薬の成分を分解する腸内細菌が存在するかどうかは、人によって異なります。
なので、同じ薬でも治療効果には個人差が生じるのですね。
腸内細菌と漢方薬
漢方薬は、複数の生薬が混ざって作られています。
この生薬は植物由来の化合物(ファイトケミカル)で、そのほとんどがグルコースなどの糖が結合している分子構造をしています。
これを配糖体と言います。
配糖体は「糖鎖」を有しています。まさに“糖”が連なった”鎖”状のもの。
鎖ですから、人間の消化酵素ではほとんど分解できず、そのままでは腸管から吸収されにくいのです。
そこで登場するのが、腸内細菌。
多くの腸内細菌は、この糖鎖を切断する酵素を持っています。
腸内細菌によって糖鎖がとれて配糖体ではなくなった成分は、体内への吸収率が増加し、薬効につながります。
つまり、漢方薬に含まれる成分の多くは糖鎖状なので分解できず、そのままでは効果を発揮しないのですが、腸内細菌よって分解することができるため、からだに吸収できパワーを発揮できる、ということです。
ただ前述の通り、腸内細菌は人によって種類が違います。
同じ漢方薬でも、人によって効果が異なったり、効く場合と効かない場合がありますが、これは配糖体を分解する種類の腸内細菌が、腸内に存在するかどうかによるのです。
薬が効くかどうかは、腸内細菌叢にかかっていると言ってもいいでしょう。
腸内細菌のバランスが崩れる理由
からだを健康に維持するために大切な腸内細菌のバランスですが、結構崩れやすいのです。
その理由はいろいろありますが
・バランスの悪い食事
・暴飲暴食
・睡眠不足
・運動不足
・ストレス
・加齢
といった、極端な生活や不規則な生活などの生活習慣によるところが大きいです。
とても身近なものなんですね。
腸内細菌のバランスをサポートするもの
バランスを崩さないためには、要は先程の逆になればいい、ということ。
即ち
・バランスの良い食事
・適度な運動
・十分な睡眠
・ストレス発散
といった生活習慣を整える、ということです。
なかでも「食べもの」については、以下の3つが入っているものを積極的に摂るようにするといいでしょう。
・プロバイオティクス
「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物」のこと。
このように書くと、逆に大丈夫か?という心配が起きそうですが、つまりは「からだの外から摂って腸内の善玉菌を増やそう!」というと。
例えば乳酸菌やビフィズス菌などです。
・プレバイオティクス
もともと腸内にある善玉菌を増やしたり、その活動を促進するもののことです。
つまり、善玉菌の”えさ”になるものを外から摂って、善玉菌を増やしたり元気にしよう!」ということ。
例えば、食物繊維やオリゴ糖、ラクトフェリンです。
・バイオジェニックス
腸内フローラを介さず、からだに直接働きかける乳酸菌の生産物質などを指します。
乳酸菌体ペプチド、植物フラボノイド、DHA、EPA、ビタミンA・C・E、β-カロチンなどの食品成分が該当します。
まとめると
プロバイオティクス→外部から善玉菌を補充
プレバイオティクス→体内にいる善玉菌を元気にする
バイオジェニックス→腸内フローラを介さずからだを守る
この3つを含んだ食品を食べることで、腸内環境をサポートすることができます。